子どもとの会話2つ
娘とはじめて言葉でやり取りをした。
よわい雨が降っていたので、レインコートを着て保育園に子どもたちを迎えに行った。
保育士の先生から引渡しがあって、出入り口からよちよち出てきた娘がレインコートを着た私を見て言ったのだ「あめ」。
「うん、ちらちら降ってるよ」ととっさに答えたら、娘はうなずいた(娘は小さいころからうなずくという意思表示が得意だ)。
おっ、なんか今の「やり取り」だったな、と思った。
*
動物の名前をやたらに覚えるところから始まって、このところ娘もずいぶん話すようになった。
いわゆる二語文「ぞうさん、いっぱい」とか「にーに(お兄ちゃん)、いない」も出初めていたが、あまり言葉でやり取りをしているなあと実感したことはなかったのだった。
「ぞうさん、いっぱい」と言われたら「そうだね、ぞうさんいっぱいだね」という具合でこちらは繰り返すだけなので(「だけ」とはいえ嬉しいやりとりではあるのですが)、コミュニケーションというよりも娘の確認作業に立ち会っているという気持ちでいたのだ。
リクエストも身振り手振りではなくずいぶん言葉をつなげて言うようになったが「おかーさん! ねないー! おきてー! だっこー!」これも、やり取りというよりは、ああ、素直な希望を述べとるのう、くらいのものだった。
「あめ」「うん、ちらちら降ってるよ」(こくん)
語数は少なくても、娘とやりとりをしたとはっきり感じたのだ。
*
4歳の方の息子は言葉で会話するようになってもうずいぶんたつ。もちろん、息子にはまだまだ知らない口語のパターンも多い。
このあいだ家で息子がハンバーガー屋さんをはじめた。
「いらっしゃいませー」というので「こんにちはー、チーズバーガー1つください」と付き合う。にこにこ。
「100円です!」「おっ、安いですね、はい、100円」にこにこ。
「カードはおもちですか?」「はいはい、持ってますよ」しーん。
息子の顔が曇った。あれ、なんか変なこと言ったかなと思い言い直してみる。
「すみません、やっぱりカード、持っていませんでした。作ってくれますか?」しーん。息子の顔は晴れない。どころか、泣きそうになっている。
で、泣いた。
ええ?! だ。「カードはおもちですか?」って聞かれたから「持ってます」って(もしくは「持ってません」って)言っただけなのに。
聞いてみると、息子としては「カードはお持ちですか?」といわれたら「はい、ください」と言って欲しかったのだという。そういうシーンを実際にお店で見たそうだ。
うーむ。まだ泣く息子に、「カードはお持ちですか?」じゃなくて「カードをお持ちになりますか?」って言えば「はい、ください」って返事になるよ、ということを伝えた。
息子はぽかんとしていたが、そのうち別の遊びをはじめた。
*
2週間くらいして、また家で息子が今度はパン屋さんをはじめた。
「いらっしゃいませー」「こんにちはー、メロンパン3つください」にこにこ。
「100円です!」「おっ、安いですね、はい、100円」にこにこ。
ここで一瞬息子が真顔になった。短い間だったが、普段子どもの機微や感性などに一切鈍感な私も気づくほどの真顔だった。
「カードをお持ちになりますか?」にこにこ。
あっ!
「はい、ください!」にこにこ!
私の「はい、ください!」を聞いて息子は、はっと息をはいた。
レジからピッピッとキーを押してカードを出して(出すふりをして)渡してくれた。
「最初っからこういえばよかったのかー」といって、にこにこした。私はにこにこじゃ足りなくて少し声を出して笑ったよ。
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